E.S.Cheers!! - #Eurovision 2017-

ヨーロッパで開催される年に一度の音楽祭ユーロビジョン・ソング・コンテスト(ESC)の最新情報などをお届けします。

ロシア

【ESC2017】ロシア:出場辞退決定 消された「炎」

〈Channel 1 ユーロビジョン2017の放送取りやめ〉
ユーロビジョンを主催するEBUは3/14に、ロシアがユーロビジョン2017の出場を辞退する事を発表しました。(過去記事:ロシア代表 ウクライナへの入国禁止参照)

EBUの声明によると、ウクライナ当局がロシア代表の選ばれた歌手Julia Samoylovaの入国禁止を決めたことを受け、EBUはロシアの放送局Channel 1に「衛星中継での出演」か「アーティストの変更」を提案したものの、いずれも受け入れられなかったとしています。その後、Channel 1はユーロビジョン2017の放送を行わないことを表明し、参加辞退が決定したということです。

一方EBUはウクライナ当局に対し、Juliaの入国禁止措置について「ユーロビジョン・ソング・コンテストの清廉さと非政治的性質、そしてすべての国を友好的なコンテストの舞台へ集結させるという(主催者の)使命を完全に損なってしまう」と強く非難したことも明らかにしていますが、噂で流れていた開催地変更については触れておらず、キエフでの開催を軸に双方と接触を図っていたことが伺えます。

なお、ロシアで2番目に大きなネットワークを持つテレビ局RTRも、今大会の放送を行わないと表明しているということで、ロシア国内でユーロビジョン2017を見ることも難しい状況となりました。



〈Julia Samoylovaのプロフィール〉
Julia Samoylova(Yuliya Olegovna Samoylova / Юлия Олеговна Самойлова)は1989年4月にソビエト連邦(現:ロシア連邦)コミ共和国中部の都市ウフタで生まれました。

生まれた時は元気な赤ちゃんそのものだったというJuliaでしたが、徐々に足の機能が失われ、幼少期の頃には既に車椅子生活を送ることになってしまいました。医師から脊髄性筋萎縮症(SMA)と診断された彼女は、「もってあと3年」と言われていたこともあったのだそうです。

脊髄性筋萎縮症は、運動神経細胞が蝕まれる遺伝性疾患の一種で、日本でも指定難病に分類されており、根本的な治療法が確立されていません。運動神経が蝕まれるため、歩行や立位が困難になるほか、呼吸困難や嚥下困難(上手く食事を飲み込めない状態)が起きやすく呼吸器疾患にかかりやすいとされています。(ちなみに、彼女は一部メディアに対し「ポリオワクチンの接種により患った」とコメントしているそうですが、ポリオワクチンとSMAとの因果関係は証明されていません)

そのような危機的状況から音楽の力で徐々に生きる力を付けてきたというJuliaは、ウフタのレストランで石油工場の労働者相手に歌を披露するようになり、2008年には「TerraNova」というバンドを結成し本格的な音楽活動を行うようになります。

2013年、彼女はロシア版Xファクター「Faktor A(Фактор А)」第3シーズンに出場します。

Julia SamoylovaMolitva」Marija Šerifovićカバー Faktor A第3シーズンより)

ユーロビジョン2007の優勝曲で、大きく伸びやかな声量を要する「Molitva」をJuliaはオーディションで完璧に歌いこなし、審査員や観客を魅了。彼女は見事合格し、決勝ステージまで駒を進めました。しかし、結果は準優勝。惜しくも優勝を逃してしまいました。

Julia SamoylovaStena(壁)」 Faktor A第3シーズン決勝より)

2014年、彼女はロシアのソチで開催された冬季パラリンピックの開会式でパフォーマンスを披露しました。

(ソチパラリンピック開会式より)

そして2017年。Juliaはロシアの放送局Channel 1の内部選考により、ユーロビジョン2017ロシア代表に選ばれました。

Julia SamoylovaFlame Is Burning」)

ベルリン在住のソングライターNetta NimrodiとArie Burshtein、そしてユーロビジョン2013ロシア代表Dina Garipovaの「What If」のプロデュースにも関わったLeonid Gutkinの3人によって作られたこの楽曲は、「暗い闇の中でも私達の炎は輝き、明るく燃え上がる」と、どんなにつらい状況においても夢と愛を道標にして生きていく事を歌い上げたバラードナンバーに仕上がっています。

Dina GaripovaWhat If」 ユーロビジョン2013決勝より Leonid Gutkinプロデュース楽曲)


しかし、2015年にウクライナ当局の許可を得ずにクリミア半島に入り公演を行ったことを理由に、Juliaは今年から3年間ウクライナへの入国を禁じられてしまい、ユーロビジョンへの出場が実質的に困難になってしまいました。ロシア側とウクライナ側、そしてEBUの3者は話し合いを重ねたものの、結局合意に至らず、今回の決定となってしまいました。

Juliaはウクライナ側で入国禁止が決まった際、「私は動揺していません」とコメント。今年出場できなくても、来年の出場に挑戦したいと意気込みを語っていました。今回の決定は非常に残念な物となってしまいましたが、どうか、Juliaの心に灯った炎が消えることなく、来年へ挑戦していただきたいと思います。


参考:EBU公式ESCKAZ、Wiwibloggs"RUSSIA’S YULIA SAMOILOVA BECOMES SECOND SINGER IN WHEELCHAIR TO COMPETE AT EUROVISION"、Wikipedia"Yuliya Samoylova (singer)"、難病情報センター"脊髄性筋萎縮症"

ロシア代表 ウクライナへの入国禁止

〈ウクライナ保安庁の声明〉
現地時間3/22、ウクライナ保安局(SSU)の報道官がFacebookで、ユーロビジョン2017ロシア代表Julia Samoylovaのウクライナへの入国を3年間禁止するという声明を発表しました。これは、Juliaが2015年に、ウクライナ当局の許可を得ずにクリミア半島で公演を行った事を受けての決定だということです。

このニュースはユーロビジョン系ニュースサイトのみならず、海外の主要メディアや日本でも報じられ、NHKニュースでは「かつて『兄弟国』と呼ばれた両国の対立が、国際的な文化行事にも暗い影を落としている」と伝えました。

ロシア系ニュースサイトのスプートニク日本語版では、「ウクライナは障害を持つロシア人女性歌手のユーロビジョン参加を許さない」とセンセーショナルなタイトルで報じ、ロシア上院国防安全保障委員会のフランツ・クリンツェヴィチ第1副委員長が、「ユーロビジョン指導部がJulia Samoylovaを支持しない場合はロシアは今後、コンクールへの参加を一切ボイコットする」と、EBUの今後の出方次第でユーロビジョンをボイコットする事を示唆するコメントを紹介しています。

なお、この第1副書記長は、ユーロビジョン2016でウクライナが優勝した際、「今年のユーロビジョンでは芸術性より政治が優先された」と不快感を示し、2017年の出場を見送る可能性にも言及していました。

この報道に関して、ロシアの一部メディアが「アルメニア代表歌手も入国を拒否される可能性がある」と報じていましたが、アルメニアの放送局は「正式な通達が届いていない」とコメントした他、ウクライナ当局も「ロシアによるFake newsだ」として、これを否定するコメントを出しています。


〈Juliaの気持ちは…〉
ウクライナ当局による決定が下る前の週、Juliaは隣国フィンランドで、リハビリを兼ねた治療を受け、ユーロビジョンへの出場に備えていました。しかし、3/22にウクライナ当局により入国不可の決定が下ったことにより、彼女はキエフのステージに立ってパフォーマンスを披露することが事実上できなくなってしまいました。

この件について、Juliaは「私は動揺していません」とコメント。事態が大きく変わることに期待を示していたほか、仮に今年出場できなくても、来年の出場に挑戦したいと意気込みを語っています。来年の出場に関しては、ロシアのテレビ局も同意しているそうです。


〈EBUの今後の動きは〉
ユーロビジョン・ソング・コンテストを主催するEBU(欧州放送連合)は、今回のウクライナ当局の決定について、開催国の法律は尊重するとしながらも、「(政治的利用は行わないとする)ユーロビジョンの精神に反しており、深く失望している」と声明を発表。ウクライナとロシアの各テレビ局を始めとする関係者に対し、事態を打開するための働きかけを行うとしていました。

3/24現在、具体的な案として持ち上がっているのは、Juliaのパフォーマンスを衛星中継で披露するというものです。現在、ロシアのユーロビジョン担当放送局Russia 1などと、衛星中継の可能性について話し合いを行っているとのことです。ちなみに、ユーロビジョンのパフォーマンスを衛星中継で行うという手法は、過去にも類を見ない方法で、今回仮に行われるとすれば、史上初の出来事となります。

話し合いは現在も行われているということですが、アーティストを第一に考慮した決定が下されることを願うばかりです。具体的な決定が下り次第、Juliaのプロフィール紹介と共に当ブログで取り上げる予定です。


第二次世界大戦後、人々の心の復興を願って開催されたのがユーロビジョンなのですから、ウクライナとロシアに限らずヨーロッパが一つになって盛り上がるこのステージ上に、争いを不要に持ち込むべきではありません!


参考:
NHK"ウクライナ 歌謡祭でロシア人歌手入国禁止"
EUROVOIX"RUSSIA: YULIA SAMOILOVA BANNED FROM ENTERING UKRAINE"
BBC NEWS"Eurovision 2017: Ukraine bars Russian singer Samoilova from contest"
スプートニク日本版"ウクライナは障害を持つロシア人女性歌手のユーロビジョン参加を許さない"
CNN日本語版"ロシア、ウクライナ人歌手の優勝に反発 ユーロビジョン"
Oikotimes"Armenian broadcaster receives no official writ from Ukraine"
Wiwibloggs"“SHE SHOULD NOT COME” — UKRAINE’S SECURITY SERVICES HAVE PREPARED THE PAPERWORK FOR JULIA SAMOYLOVA’S POTENTIAL BAN","“I AM NOT UPSET” — RUSSIA’S JULIA SAMOYLOVA SPEAKS ABOUT UKRAINE’S BAN AS NETWORK TEES HER UP FOR EUROVISION 2018"
ESC公式"Statement from the EBU regarding Russia's participation in the 2017 Eurovision Song Contest","EBU offers Russian singer opportunity to perform via satellite"

【速報】ロシアの審査員 審査中の模様を生配信

〈投票用紙まで映り込み…〉
日本時間5/9の深夜に行われた準決勝1日目の審査員投票を兼ねたドレスリハーサルで、ロシアの審査員が審査中の様子を動画配信アプリPeriscopeで生配信していたことが明らかになりました。

この模様は、今回ロシアの審査員として参加していた女優・歌手のAnastasiya StotskayaのPeriscopeアカウントで配信されたとのことですが、現在このアカウントの動画は全て削除されています。

しかし、ここで配信されていた動画はYouTubeなどで転載されており、現在もその動画の一部を見ることができます。

(オランダ代表出演時の様子)

出演アーティストに対する審査員の反応が写っているだけでなく、本来ならば慎重に取り扱われなければならない審査員投票用紙と見られる紙も映り込んでいることが伺えます。

この生配信に関してはEBUも事態を把握しており、これからロシアの放送局を捜査する予定だということです。
なお、EBUがロシアに対し、どのような処分を下すのかはまだ決まっていません。


参考:Eurovision Ireland"***BREAKING NEWS*** – Russian Jury Allegedly Periscope Themselves Judging Tonight’s Semi Final at Eurovision"、oikotimes"May 10 / EBU to investigate the jury of the Russian national broadcaster"、ESC Insight"‘Thunder and Lightning’ turns to media storm? The aftermath of the Russian jury leak"

【ESC2016】ロシア:これぞロシアの本気!! 今年こそ二度目の優勝なるか?



ユーロビジョン2016ロシア代表は、Sergey Lazarevの「You are the only one」に決まりました。
強めのキックとスウィングの効いたノリノリのEDMで、ドラマチックなコード展開も印象的な一曲です。

今回楽曲のプロデュースを手がけたのは、ギリシャの作曲家Dimitris Kontopoulosです。
彼はユーロビジョン2014ロシア代表トルマチェフ姉妹の「Shine」や、ユーロビジョン2009ギリシャ代表Sakis Rouvasの「This Is Our Night」など、ユーロビジョンの楽曲を数多く手がけている作曲家として知られています。

Sakis RouvasThis Is Our Night」 ユーロビジョン2009より)

今回の楽曲「You are the only one」は、万華鏡のようにめくるめく展開に惹かれるPVもとても印象的ですが、ダンサーの数といい、ワンカット風味に仕上げた内容といい、本番のステージ演出を強く意識したPVなのではないかとついつい妄想してしまいます… 
もしこの世界観をステージで再現出来たとしたら、ロシアの再優勝はあながち夢ではないかもしれません。


〈Sergey Lazarevのプロフィール〉
Sergey Lazarev(本名:Sergey Vyacheslavovich Lazarev)は1983年にソビエト連邦(現:ロシア連邦)の首都モスクワで生まれました。

Sergeyは小さい頃から歌手の道を歩み始めていた…のではないらしく、6歳の頃から9歳の間は体操競技に力を注いでいたのだそうです。PVで惜しげも無く披露している肉体美の根幹は、この頃に養われたのかもしれませんね。

10歳の頃から歌や演技といった芸能の道へ進み始めたSergeyは、様々な音楽賞の受賞や少年音楽コンクールでの優勝を飾る中で着実にキャリアを積み、14歳の頃には少年少女によるアイドルユニット「Neposedi」のメンバーとして活躍するようになりました。

2000年代に入り、「Neposedi」のメンバーからJuliaとLenaが「t.A.T.u」を結成し活躍する中、Sergeyは男性メンバーのVlad Topalovと「Smash!!」というユニットを結成し、ロシアを始め東ヨーロッパなどで人気を博しました。

Smash!!Should have loved you more」 ちなみにSergeyは黒髪の方。)

2002年にシングル曲「Should Have Loved You More」をリリースしたSmash!!は、3枚のアルバムをリリースし、ロシアのティーンエイジャー達を魅了してきたのですが、2006年に解散。その後Sergeyはソロで活動していく事となります。

解散前の2005年からソロ活動を始めていたSergeyは、翌2006年にMTV Russiaの音楽賞RMA2006でDima Bilanを下しBest Male Singerを受賞します。

(RMA2006 Best Male Singerの模様)

RMA2006でDimaを下したSergeyは、2008年にユーロビジョンの国内予選に出場しますが、この大会では優勝の座をDimaに譲ってしまいます。

Sergey LazarovFlyer」 ユーロビジョン2008ロシア国内予選より)



Sergey LazarevCure The Thunder ft. T-Pain」)

その後もアルバムリリースを始め、T-Painやロシアで活躍するアーティストTimatiなどとコラボレーションし、精力的に音楽活動を続けてきたSergeyは、今回ロシアの放送局Russia 1の内部選考により、ユーロビジョン2016ロシア代表の座を射止めました。

Sergey LazarevYou are the only one」ライブパフォーマンス ロシア版Dansin' With Starsより)


ユーロビジョン2016ロシア代表Sergey Lazarevは、現地時間5/10に開かれる準決勝1日目に出場します。
非常に大きな期待が掛かるステージパフォーマンスは、見逃せません!


参考:Wikipedia"Russia in the Eurovision Song Contest 2016","Sergey Lazarev"、EuroVisionary"Sergey Lazarev’s Russian 2016 Eurovision entry leaked"、ESC公式”Russia

ロシア代表Polina Gagarina ウラジオストクで生歌披露 他

〈ロシア代表Polina Gagarina ウラジオストクで初ライブ・パフォーマンス〉
ユーロビジョン2015ロシア代表Polina Gagarinaが現地時間4/2にウラジオストクで開催したライブで、代表楽曲「A Million Voices」の生歌を初めて披露しました。
 
Polina GagarinaA Million Voices」)

各国のエントリーが出揃った今。生歌が原則のユーロビジョンにおいて、発表された音源のままのキーで生歌を披露できるのかどうかがファンの間で注目を集めていますが、Polinaはそんなファンの心配を寄せ付けない見事なパフォーマンスを披露してくれました。

ユーロビジョン2015ロシア代表Polina Gagarinaは現地時間5/19に開かれる準決勝1日目に出場します。


参考:Oikotimes


〈スウェーデン代表 パフォーマンス内容変更へ〉
ユーロビジョン2015スウェーデン代表Måns Zelmerlöwが本選で披露するパフォーマンスに大きな変更が加えられるかもしれません。

スウェーデンの放送局SVTなどによると、Månsが国内予選Melodifestivalenで披露したパフォーマンスに対し、プロジェクター等を駆使した動画が人気を集めているダンスパフォーマーa dandypunkから「動画の内容が酷似している」との指摘があったようです。

まずは二つの動画を御覧ください。
 
Måns ZelmerlöwHeroes」 Melodifestivalen2015より) 

a dandypunkThe Alchemy of Light」)

冒頭に三角帽をかぶった人形が現れ、傘を持って舞う辺りは非常に似ていますよね。

この指摘に対し、Månsのステージ演出を担当したFredrik “Benke” Rydmanは、a dandypunkからの引用を認めています。

なお、現在YouTubeのユーロビジョン公式チャンネルからは、この指摘を受けてMelodifestivalenで披露したMånsのパフォーマンス動画が削除され、代わりにリリックビデオが公開されています。 

かねてから、ウィーンの本選会場でプロジェクターを使ったパフォーマンスが困難である可能性が指摘されていたこの楽曲ですが、Måns本人は「あの子は違った服を着て登場することになるよ。あの時は2月だったからね」と、この騒動についてコメントを残しています。

Måns自身は「Måns Petter」 と名付け愛着を持っていたというあの人形。
本番ではどんなパフォーマンスが披露されるのでしょうか?


参考:ESC TodayOikotimes



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