ユーロビジョン2013ギリシャ代表は、バンドKoza Mostraとギリシャのレベティカ(大衆歌謡)シンガーAgathon Iakovidisのスペシャルユニットでの出場が決定しました。曲のタイトルは「Alcohol is Free」。

バルカン半島の音楽の要素とスカが上手く溶け合って、陽気に聞こえるけど、歌詞をよく読むと、混迷を極めたギリシャ経済や政府への皮肉にも取れそうな内容だったり… 
3分の中にギュッと色んな要素がつまった、カチッと決まったコラボ曲です。

〈Koza MostraとAgathon Iakovidis〉
Koza Mostraは、2011年に結成された、ギリシャを中心に活動している、スカやパンクにバルカン音楽の要素を組み合わせたミクスチャーバンドです。

メンバーは、
 Ilias Kozas(リードシンガー 1984年生まれ テッサロニキ出身)
 Christos Kalaitzopoulos(アコーディオン担当 プトレマイダ出身)
 Vassilis Nalbantis(トランペット担当 コザニ出身)
 Alex Archontis(ドラム担当 1984年生まれ テッサロニキ出身)
 Stelios Siomos(ギター担当 1980年生まれ テッサロニキ出身)
 Dimitris Christonis(バスギター担当)
の6人組なのですが、今回フィーチャリングボーカルとしてAgathon Iakovidisを迎え入れる際、全員で出場するとユーロビジョンのステージに上がれる人数の制限(最大6人まで)に引っかかってしまうこともあり、今回はバスギターの方が抜ける形での参加となります。

先月、代表曲「Alcohol is Free」のフルバージョンなどが収められたファーストアルバム「Keep Up The Rhythm」が発売されました。

フィーチャリングアーティストのAgathon Iakovidisは1955年生まれの58歳。Koza Mostraのリーダーらと同じくテッサロニキの出身。ギリシャの大衆歌謡レベティカの歌手として1973年から活動を続けています。1981年に活動拠点をアテネに移してからは、ギリシャ国内の様々なアーティストとコラボレーションしたり、ヨーロッパやアメリカなどをツアーで周るなど、より精力的に活動を行うようになりました。

世代もスタイルも超えた二組のコラボレーションは、5/16の準決勝二日目の舞台に登場します。

参考:ESC公式、Wikipedia "Koza Mostra" , "Agathon Iakovidis"、ESC Today "Greece: Koza Mostra release first album Keep up the rhythm"、Facebook Koza Mostra公式ページ


〈ユーロビジョン2013 ライブパフォーマンス〉

(ユーロビジョン2013 決勝より)


〈ユーロビジョン ギリシャの成績〉
ギリシャは1974年にユーロビジョンに初参加しています。
初参加してからしばらくの間は、最高順位が5位と、そこそこの成績を収めていたギリシャですが、2000年以降に頭角を現すようになります。2001年と2004年には3位入賞、そして2005年にはこの曲で優勝します。

(2005年優勝曲 Elena PaparizouMy Number One」)

その後も好調な成績を残し続けているギリシャ。準決勝制が導入されてからの決勝進出の勝率は9勝0敗
この連勝の背景には、隣国キプロスと互いに最高得点の12点を入れ合う仲であることも要因としてあげられるようです… ただ、今回の準決勝はキプロスとは別の日程となるため、隣国の力を借りずに決勝に進めるのかが注目されます。

10回連続の決勝進出を決めることができるのか!?
5/16は要注目です。

参考:Wikipedia「ギリシャのユーロビジョン・ソング・コンテスト




〈欧州危機とユーロビジョン ギリシャの決断〉
今回のユーロビジョンで残念なポイントの一つとしてあげられるのが、欧州危機の煽りを受け、参加費が捻出できず出場を辞退する国が複数出てきたことです。

国の財政危機が深刻なポルトガルをはじめ、スロバキアボスニア・ヘルツェゴヴィナも財源不足により、今大会の参加を取りやめています。2011年まで大会に参加していたポーランドも、同様の理由で2年連続の大会不参加を決めています。

欧州危機の震源地であるギリシャも、今回の大会参加には紆余曲折があったようです。

GREECEJAPAN.COMの記事によると、昨年12月の時点ではギリシャも大会に参加しない方向であったのだとか。ギリシャ政府報道官のシモス・ケディコグル議員は、財源不足に加え、国民感情への配慮として、今回の大会参加を取りやめるべきと発言していたそうです。

ギリシャ国内でのユーロビジョンの放送を担当する国営放送ERTでも大会出場についてかなり議論されたようで、参加費用を賄えるスポンサーが現れない限り、不参加は濃厚だったようです。ギリシャは2000年の時に、同様の理由で参加を取りやめていますが、今回のケースは欧州危機も背景にあり、前回とは質の異なるものと言えるでしょう。

しかし状況は一変し、今年1/16にERTは参加することを決定します。

記事によると、ERTは、ユーロビジョン関連番組の高視聴率を考慮し、ERTに経済的負担のないことを前提に、開催から得られる収益の獲得を模索する方向で参加を決定したのだそうです。深刻な状況に直面している時だからこそ、参加することで国の雰囲気を良い方向にすることもできるのではないか、といったところでしょうか。いずれにせよ、今回のERTの判断は英断だったと思います。

欧州危機により、多くの国が大会出場に躊躇し、不参加する国も出てきていることについて、EBU(欧州放送連合)や大会担当のテレビ局SVTも様々な案で経費削減に取り組み、参加各国の金銭的負担を減らす努力をしています。

今回の開催地がストックホルムではなくマルメに決まったのも、小さめな会場を選ぶことで費用を削るという効果や、地理的にヨーロッパの中心部にあり、移動にかかる費用を削ることができるという効果を見込んでのものだったようです。

ヨーロッパを代表する伝統的な音楽番組を、より持続的に、そしてより多くの国が参加できるように、大会運営に対する姿勢を改める事が必要になっている時なのかもしれません。来年は、今年より多くの国が参加できるようになるといいなぁ…


参考:GREECEJAPAN.COM "ギリシャ、来年のユーロビジョン・ソング・コンテスト不参加"(2012/12/1) , "ギリシャ、最終的にユーロビジョン参加を決定"(2013/1/16)、Wikipedia「ユーロビジョン・ソング・コンテスト2013